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夜のお別れ V


いつしか

言葉を交わさずに会話をするようになった

私達はもはや

向かい合う必要を失ったことに気付く

私は既にあなたの中に入り込んでしまった

ここにいる私はただの抜け殻、

珍しくもない化石

色褪せ硬くこわばっている

近付かないで

私ももう見つめない、だからあなたも

私は窓際に座り海風に吹かれている

あなたは目をつむり

口をつぐんだまま何か話している

シィ黙って

ねえ聞こえるでしょう耳を澄ませて

私とあなたの抜け殻が風に吹かれ

カサカサと鳴っている

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