夢の

あなたの隣りで男が笑う


いつの間にかあなたはどこにでもいる平凡な女などではなく

平凡さを厭う、ひとりの特別なうつくしい女になる

あなたは慣れた手付きで

いささか危険なナイフの言葉を

男の胸元に手首にもみあげに

投げつける

傷口によって流れ出る血の色が違うことを

あなたはよく知っている

どの男も同じだ

けれどもあなたは探している

あの鮮やかでいてうちがわから濁ってくるような、紫色の血を

それは生まれたときの

あなたじしんのからだの色だ

その色を見るまで

あなたは満足しない

どの男も同じだ

紫の血を誰も流してはくれない

どこを切りつけても

誰を切りつけても


気付くと

男はあなたの横で

いちまいの絵を描き終えた後のパレットのように

いろんな色の血で

汚れて

息を震わせている



あなたは笑う

そして平凡などこにでもいる女になろうと

目を閉じて

男にもたれかかった
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