日日のレントゲン
I
少年がもっと小さい少年に
青バケツの金魚を覗き込んで
教えていた
「こいつもいつか死ぬんだ」
廻らぬ舌で少年は
もっと小さい少年に重々しく宣告した
大人の私は
「うん、そうだよ」
とやけに軽い口調で呟いた
首を傾げて立ち尽くす幼い子を
通り過ぎても
背中についたもう一つの眼で
見つめていた
うす緑色の私の夕暮れ
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